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最高裁判所第一小法廷 昭和45年(オ)262号 判決 1970年6月04日

上告人

稲数修

被上告人

遠近一

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について。

被上告人が上告人に対してなした本件建物部分の賃料を増額する旨の意思表示が借家法七条に基づく賃料増額の請求であることは、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の判文に徴して明らかであるところ、それは形成権の行使であるから、賃料の増額を請求する旨の意思表示が上告人に到達した日に増額の効果が生ずるものと解するのが相当である。本件の場合、民法九七条一項にいう「相手方ニ到達シタル時」とは、右の趣旨に解すべきである。したがつて、被上告人のなした賃料増額の意思表示が上告人に到達した日である昭和三七年七月九日から月額二〇、〇〇〇円に、同三八年一二月一日から月額二二、〇〇〇円に増額の効果を生じたとする原審の判断は、正当として是認することができる。してみれば、原判決に所論のないことは明らかであり、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(大隅健一郎 入江俊郎 松田二郎 岩田誠)

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